環境とかそんな話
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84歳になる李老人が、小さな袋に入った米を見せてくれた。純白で艶があり、ふっくらした米粒だ。一見した限りでは、異常があるとは全く思えない。しかし、成分検査の結果、基準値をはるかに超えたカドミウムが検出された。地元の人々は、このような米を「カドミウム米」と呼んでいる。
化学元素周期表48番目の重金属・カドミウムは、自然界では化合物として鉱物中に存在し、人体に入ると極めて大きな危害を及ぼす。
李老人は、自分の奇病と米との間に関係があるのではと疑いを持った。老人は体こそ丈夫だが、この20年間は、歩くことがひどく苦痛だった。100メートルも進まないうちに、脚とすねに耐えがたい痛みが襲った。
医者は明確な診断を下せなかった。そこで老人は、自ら「軟脚病」と病名をつけた。老人が住む広西チワン族自治区桂林市陽朔県興坪鎮思的村には、彼と同じような症状を患う老人が10人以上いた。
定年退職して故郷の村に戻った1982年から28年間、李老人はこの村で生産された米を食べ続けてきた。いくつかの研究論文によると、同村の水田土壌は、1960年以前から、カドミウムに汚染されていることが実証済という。当然、この村で生産された米のカドミウム含有量も、基準値をはるかにオーバーしている。
医学書によると、カドミウムが長年にわたり人体に入り続けると、骨の痛みが引き起こされる。日本では、1960年代に富山県で精錬所が流した排水が原因で多発、「イタイイタイ病」と命名された。「イタイイタイ病」の症状と李老人の言う「軟脚病」の症状は酷似している。多くの学者も、思的村村民の症状は、「イタイイタイ病」の初期症状であると指摘した。
このような症状が発生しているのは、思的村だけはない。国内各地の住民が、カドミウム汚染による症状を訴えている。
農業部門によるここ数年のサンプリング調査のほか、専門家の研究によって、中国の米の約10%には、基準値を超えるカドミウムが含まれることが明らかになった。米消費量が世界一の中国にとって、この事実は極めて深刻だ。
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